保税区内企業への貿易権認可について

 
1 はじめに
 中国経済発展が1人勝ちの様相を呈する中で、国内市場への外資参入を妨げる形となっていた各種法規制への批判が行われて久しい。WTO加盟により各規制の撤廃や改正が公約となったが、今般、認められていなかった企業の貿易権について、保税区内の企業について認可が開始される見込みとなった。関係者聞き取りなどを基に概要や今後の見通しなどについて報告する。なお、保税区毎に状況は若干差異があるため、上海外高橋保税区の場合を取り上げることとする。

2 現況
 現在、中国では貿易業は制限業種となっており、外資独資の貿易会社設立は不可能である。ゆえに中国で貿易業を行う場合は、例外的に独資貿易会社が認められている保税区に現地法人を開設することとなる。ただし、この保税区内貿易会社の活動範囲は、①保税区内企業との取引、②保税区外の中国における貿易権を有する企業との取引。③三国間取引。つまり、制度上は(税制上中国内の外国である)保税区においてのみ貿易権を有し、中国における貿易権を有しているものではなかった。そこで、外高橋保税区内の独資貿易会社が、貿易権を有しない国内企業との取引を実施する場合には、中国における貿易権を有する区内の交易市場を通じて行っていた。しかし、この交易市場利用には会費と手数料が必要であるため、それがコストに跳ね返る形となっていた。

3 認可の内容
 根拠通達は「上海外高橋など4つの保税区における区内企業への輸出入権付与と業務展開の試行的開始に関する通知」(商務部・税関総署・商貿秩函[2003]22号)であり、その主旨は(ⅰ)対象保税区は、上海外高橋、天津、深セン、アモイ保税区に限定する(ⅱ)輸出入経営権の付与は保税区所在地の区外地域基準を根拠とする、となっている。
 具体的内容について、中国系有力コンサルタントの話では、現在検討中ではあるが概ね以下のような企業への貿易権付与が見込まれているとのことであった。
①登録資本金500万元以上の内資流通企業
②登録資本金5000万元以上の外資との合弁流通企業で、外国出資が49%以下のもの
③外資を含む生産型企業が保税区内に設置する自社経営の製品販売企業
 残念ながら今回の措置には外高橋保税区内の外資非生産型企業は含まれない見込みであり、言い換えれば、WTO加盟時の公約「3年以内に外資・内資を問わず貿易権を段階的に開放する」に至るものではないこととなる。

4 今後の見通し
 外資非生産型企業への貿易権付与の見通しは、「2003年内の試行段階(今回の措置を指す)を踏まえ、問題を商務部に報告した上で、外高橋保税区の外資非生産型企業の貿易権付与を模索する」とされており、実際の付与は早くとも来年以降との見方が大方となっている。
 しかし、今後外資貿易会社に対し貿易権が付与されれば、交易市場の縮小・撤廃が現実化し、交易市場利用にかかるコスト軽減が見込まれるため、日本も含む海外からの輸入品の価格低下に繋がると考えられる。また、国内企業との人民元取引による利益については外貨両替、送金が可能になることも考えられる。
 現在、日本製品の中国市場への販路開拓における最大の問題点は国内製品との価格差である。高技術・高品質などの付加価値もその価格差を克服するには至っていない。外資貿易企業への貿易権付与は先になると見込まれるが、貿易権付与による価格差の低減と、経済成長による市民所得の更なる増加が相乗効果となって、日本製品の販路開拓に好影響を与えることが期待される。
 ただし、ブランド戦略徹底などにより、中国市場への販路開拓を先行させている欧米企業にも同じ影響があることを考慮すると、日本の企業には、欧米勢に勝るような俊敏かつ的確な戦略設定および実行が求められよう。

福井県上海事務所 藤井昌和  2003年7月

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