「難局に直面する中国進出企業 ~増値税還付率引下げと電力不足~」

 新型肺炎をものともせず成長を続けてきた中国であるが、ここにきて進出企業を取りまく環境に大きな影響を及ぼす変化が見られる。
一つには2004年1月1日から実施される増値税還付率の引き下げである。
中国の増値税は日本の消費税のようなもの(注1)で、取引ごとに発生する付加価値を課税標準とする税金である。現在その税率は17%であり、これまで中国政府は生産品を輸出すれば13%から全額17%の還付が受けられるという措置をとっていた(ただし実務上は還付について条例規定のとおり進まないことは周知のとおり)。
ところが、今般一部の輸出奨励品目を除き、輸出にかかる増値税還付の率が2~4%程度引き下げられることになった。輸出企業にとってはこの引き下げ分が丸々コストとなる(注2)ため、製品自体の価格に反映されることになるだろう。コスト削減を求めて中国へ生産拠点を移し日本へ製品を輸出している企業、特に進料加工で中国国内調達率を高めている企業(注3)にとっては大きな問題となっている。
増値税収入が税収全体の約6分の1、国外輸出に関わる増値税は月間総額で300億元、うち還付額は150億元にも上ると言われることから、引き下げが中国国家財政に与える影響も大きく、また2005年以降さらに段階的に還付率を引き下げるという話も出ている。
この還付率引き下げは、輸出価格上昇を結果的に促すことで、貿易諸外国の対中貿易赤字増大による元切り上げ圧力から目をそらす目的と、財源不足によるこれまでの制度に基づく増値税還付の遅れ(現時点で還付未了額が3000億元とも言われる)を改善する目的があると思われるが、1999年以降これまでとられてきた極端な輸出奨励から、政策の方向性を大きく変えているのは確実と言えよう。中国における進出企業の加工形態の変動も含め、今後の動きがさらに注目される。
また一方で、今年の夏も大きな影響を及ぼした電力不足による配電制限が今年の冬以降も実施されている。
上海総領事館が上海市当局から得た情報によると、上海では今年の冬もピーク時には200万キロワットの電力不足が見込まれているため、消費ピーク対策として企業に対して休日への操業日振り替えを要請しており、また契約容量に対する基本料金値上げを検討しているという。
実際上海市の各工業区などでは、週日の停電による土日への操業日振替を余儀なくされた企業、また振替がきかず生産減少の憂き目を見ている企業が続出している。
浙江省や江蘇省、湖南省、山西省などでも配電制限を実施しており、一部ではデパート、ホテルなど商業施設や住宅にも制限が実施され、生活にも重大な影響を及ぼしている状態である。
抜本対策として発電所の増設を急ピッチで進めているが、来年夏も上海ではピーク時に400万キロワットの電力不足も予想されるなど、あと5年程度電力の需給ギャップが続くとされている。
順調に見える中国経済でも徐々に環境は変化しており、進出企業は厳しい局面を迎えている。
(注1)    日本、欧米などの消費税は消費型付加価値税、中国の消費税は生産型付加価値税であり、形態は異なる。「輸出すれば還付」という行為は生産型付加価値税の構造には適合していない。つまり輸出を奨励するための政策的措置といえる。
(注2)     輸出企業は、それまでに発生した増値税を全額仮払いしており、最終生産者という立場から還付率引き下げによる負担は全て当該企業にかかることとなる。
(注3)     国内取引による原材料については、当然増値税が

福井県上海事務所  藤井 昌和
2003年12月26日

戻る