「中国商業分野の解放について」

 (1)はじめに
中国において商業(卸売・小売)分野は、外資企業に対して厳しい規制が行われており、「外商投資商業領域管理弁法」(以下「新弁法」、2004年4月16日公布、同6月1日より施行)が施行される前、「外国投資商業企業試点弁法」では、最低資本金制限(卸売8,000万元、小売5,000万元)、出資比率制限(外資マイナー出資のみ)、出資者資格制限など非常に厳しい制限が規定されている。現段階でも、規制緩和はされたものの、完全開放とは言えない。ただし、WTO加盟時に、加盟3年後に、一部の例外を除き、貿易権を外資企業も含めすべての企業に付与すると公約している。また、内販については「外商投資商業領域管理弁法」に基づき、2004年12月11日より完全開放すると規定している。この二つの開放により、外資企業でも条件さえ揃えば、自由に輸出入と内販業務を行えるようになるため、国内外で非常に注目されている。
このような背景のもと、今回のレポートでは①中国の貿易分野と商業分野の開放の道のりおよび貿易権と国内流通権の関係、②この2分野の開放により日本企業が取りうる中国ビジネスの構造を中心に説明する。

(2)貿易権と貿易分野の開放について
貿易権とは総合的な貿易行為を行う権利である。つい最近まで、中国では貿易(輸出入)を行う権利を一部の企業にしか与えていなかった。それはほとんどが中国企業であり、外資企業には限定的な貿易権しか与えなかった。例えば、保税区に設立された外資の貿易会社は保税区に限定された輸出入しか認められなかったし、生産型企業は自社使用の原材料・部品の輸入および自社製品の輸出しか認められなかった。ただし、2001年12月11日に中国がWTOに加盟した際、加盟3年以内に貿易権を完全開放すると公約している。現在はその実施段階にある。外資企業に関する開放のスケジュールは、以下の通り。
1.1年以内に外資マイナー出資の会社に対して開放。
2.2年以内に外資メジャー出資の会社に対して開放。
3. 3年以内に独資企業に対して開放。
現時点で、2.の外資メジャー出資の会社に対して開放がなされている。整理してみると、現時点では以下のような外資企業が貿易権をもっていることになる。
1.生産型企業—自社使用の原材料・部品の輸入および自社製品の輸出という限定的な貿易権をもっている。ただし、前年度に1,000万米ドル以上の自社製品を輸出している企業の場合は他社製品の輸出も可能。
2.傘型会社—傘下企業の生産に使用する原材料・部品の輸入および傘下企業の製品と他社製品の輸出という限定的な貿易権をもっている。
 3.貿易会社—完全なる貿易権をもっている。ただし、現時点で合弁の貿易会社のみ設立可能。
 4.商業(小売・卸売)企業—完全なる貿易権をもっている。ただ、現時点で合弁の商業企業のみ設立可能。また、小売については、設立地域の制限を受ける。(2004年12月11日以降、地域制限を廃止する予定)
 5.調達センターー外資調達センターは2003年12月に施行された「外商投資輸出商品購買センターの設立に関する管理弁法」に基づき、設立が可能となっている。最低資本金は3,000万人民元、許可される業務範囲は
 (1) 国内貨物の輸出および輸出に関連する倉庫保管、情報提供、技術サービス。
 (2) 再輸出が前提となる委託加工原材料の輸入
 (3)  商品の購買、輸出のために必要なサンプルの輸入。
このように、外資調達センターは原則的には輸出権のみが認められている。
 6.物流企業—2002年6月に公布された「外商投資物流企業試点設立業務展開の関連問題に関する通知」に基づき、外資物流会社は、自社が物流を請け負った貨物に限定して貿易権を与えている。現時点で日本の大手商社数社がこの認可を取得している。

(3)国内流通(内販)権と商業分野の開放について
貿易権と比べ、国内流通(内販)権はもっと厳しく制限されている。WTOに加盟した際、貿易権については徐々に開放する公約をしたが、国内流通権については完全なる開放の公約をしていなかった。(現時点では、新弁法に基づき、2004年12月11日より完全開放すると規定している。)商業企業(小売・卸売企業)を設立しない限り、他社製品の内販を行いことはできない。整理してみると、現在、以下のような外資企業が国内流通権をもっている。
 1.生産型企業—自社製品(中国で製造したもの)に限定し、中国国内で販売することが許可されている。他社の製品を取り扱うことはできない。ただし、WTOに加盟した際、外資生産型企業のアフターサービスが認められており、これに必要な部品などの購入・販売は可能となっている。
 2.保税区内の貿易会社—原則的に保税区内の貿易会社も中国国内での販売はできないが、運用面において変則的な国内販売を行っているのが現状である。その変則的な運用方法というのは、保税区によって、交易市場に仲介を委託し国内販売を行うケースもあれば、貿易会社が直接国内販売を行うケースもある。ただし、いずれのケースでも、売買契約は貿易会社自身が客先と締結し、決済も貿易会社が人民元で行う。
 3.傘型会社—傘下の企業が製造したものの販売は可能
 4.卸売・小売会社—つい最近まで、非常に厳しい制限(出資資格制限、最低資本金制限、地域制限、店鋪数制限など)があったが、新弁法の施行により完全開放に向け動きだしている。
 ただし、注意しなければならないのは中国では貿易権と国内流通権は全くの別ものであり、たとえ貿易権を取得したとしても必ずしも国内販売が行えるものではない。例えば、ある企業は貿易権があっても国内流通権がないため、輸入したものを販売することができない。ある企業は国内流通権があっても、貿易権利がないため、直接海外から製品を輸入販売することができない。販売会社を設立しないかぎり、輸出入・販売を行うことはできない。

(4)新弁法の施行と国内流通分野の開放
2004年4月16日付けで、「外商投資商業領域管理弁法(商務部令[2004]第8号)」が公布され、6月1日より施行された。新弁法は、1999年6月より施行された「外商投資商業企業試点弁法」の改定という位置付けで、商業分野のさらなる開放を規定している。この規定により、外資企業に対し、卸売・小売企業の設立ができるようになった。まずは、新弁法の概要をおさえておこう。
 1.出資者資格—外国企業、その他の経済組織、個人。出資者資格の制限が無い
 2. 業務範囲—手数料ベースによる流通業務代行サービス、卸売、小売、フランチャイズ経営。
 3.最低資本金—会社法に基づく最低資本金(卸売50万元・小売30万元)。
 4.出資比率制限—2004年6月1日より、外資メジャーの合弁企業の設立が可能。2004年12月11日より独資による設立が可能。
 5. 設立地域の制限—卸売については、新弁法施行の日より地域制限を廃止。小売については、2004年12月11日以降地域制限を廃止。
 6.許認可機関—商務部が許認可を行う。受付窓口は設立地の省級の商務部主管部門。
 7.そのほかー既に設立された外資企業からの再投資による商業企業の設立が可能。
 新弁法を読む限りでは、2004年12月11日以降、外資企業に対しても、国内流通権が完全に開放されることになっている。以前の厳しい制限と比べれば雲泥の差があるため、静観する外資企業が多いようだ。個人的な観点として、法規として施行されている以上、運用されないことはまずないと考える。ただし、実際の運用面において、事業計画であるF/S、資金計画、拠点展開の妥当性などが許認可機関に問われるであろう。申請すれば自動的に認可がおりるものではないことを念頭に置く必要がある。また、いままでの慣例からいえば、規模があまりに小さいプロジェクトは後回しにされる可能性も高い。いずれにしても申請してみないと分からないことになる。

(5)新弁法の施行と日本企業が取りうる中国ビジネスの構造
 現在まで、日本企業が取りうる中国ビジネスの構造は以下の4種類しかない。
 1.一般貿易—拠点を持たずに、貿易会社を通じ製品の輸出入・販売だけを行う。
 2.駐在員事務所—直接的な営業活動は認められておらず、市場調査、情報収集と連絡業務などの補助的な活動しかできない。
 3.現地法人—独資企業、合資企業、法人型合作企業の3種類ある。
 4. 非法人形態—分公司(支店)、事業所、パートナーシップ型企業新弁法の施行によって、以下のようなビジネス構造が考えられる。
 1.生産型法人を持たずに、販売会社を設立し、製品の販売のみを行う。この場合、工場建設という固定投資を省け、中国ビジネスのリスクを低下させることができる。
 2.拠点を持たずに、一般貿易を行う。この方法はこれまでもできたのだが、間に貿易会社と問屋をかませる必要があるので、コストが跳ね上がり、製品の価格競争力を低下させている。新弁法に基づき設立した卸売・小売企業は同時に貿易権も有するため、取引の間のコスト削減ができ、製品の価格競争力が上がると推測される。
 3.すでに中国進出している企業が再投資を行い、販売会社を設立すれば、他社製品の取り扱いもできるようになり、また、中国国内で製品・半製品を調達し、海外へ輸出販売を行うこともできるようになる。

(6)終わりに
いずれにしても、新弁法の施行は画期的な出来事で、日本企業にとって中国ビジネスへの参入の方法論が増えたことはまちがいない。今後、新弁法を利用し、中国で販売会社を設立する日本企業が増えるであろう。
本県の企業においても十分な準備を行い中国ビジネスに参入することが望まれる。

福井県上海事務所  藤井 昌和
2004年9月16日

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